1995年、この地球自体がおおきな生命体であり、人類はその心と想像力を担う存在である為、一人一人が宇宙的視野から、自分自身を見直す時代に入っていました。そして、そのテーマを内包した地球交響曲(ガイアシンフォニー)というドキュメンタリー映画が登場しました。当時、交響曲第二番には、自然農から次へ進むために必要なヒントを下さった方がいました。
1921年青森に生まれられた佐藤初女さんです。その方は、女学校時代長い闘病生活の中注射や薬では改善が得られず、人の手を通して愛情込めて作られた食事で回復されました。そのことにより食の大切さを知り、当初は自宅を開放し悩みや問題を抱える人たちを受け入れ、痛みを分かち合う癒しの場を主宰。やがて、岩木山山麓に場を移し、素朴な素材の味をそのままで頂くという食の見直しにより、からだから心の問題まで改善できることを訴えた活動が広まっていました。当時、国内では2000年に向かうに連れ自殺者の数字が増えつつあり、要因は健康面が第一位でそれに伴い職業に関連し、自殺者の数字が上昇をしていました。その為、この初女さんを訪ねて全国から岩木山の麓へ、人が訪ねて来られていました。広まったきっかけは、人生を自ら閉じようとしていた青年でした。彼の両親は最後に初女さんに合う事を息子にすすめたのでした。一食も口にしない青年に初女さんは、翌日おむすびをタオルに包み両親の基へ送り出しました。帰宅した彼は人間が変わったかのように、自殺はせず人の役に立つことへ生き方を変えていったのでした。
「おむすびの祈り」と表現されるくらい、初女さんの握られたおむすびで自殺を留まるという噂が広まり、全国から人が訪ねてくるようになったそうです。その後は、食の仕事に就いている人などの中で、この食というテーマで人間の本質を取り戻す動きが始っていました。「めんどくさい」の言葉を嫌う初女さんは、一つ一つの事柄に丁寧に向き合い、その方の事を祈りながらお料理を作ります。ここでのキーワードは「祈り」ということでした。その後、「人はスープに始まりスープで終わる」の辰巳良子さんのブームが到来します。この方も同じく、食材の選び方、切り方から火の入れ方、心の込め方が、その先のお料理に現れると言われます。ここでも、心を込めるとは「祈り」でした。
この「祈り」をテーマに考えると、両親の離婚阻止のために、礼拝堂で祈ったあれは何であったのだろうという疑問や、家族で同じものを食していても健康に差ができることなどの疑問解決のヒントがこの「祈り」の中にあり、その本質を知る旅がやがて精神学の学びに辿りついたのです。入り口は食ですが、本質を知り得るには、一つ一つのプロセスを得て、たどり着く道がそれぞれに与えられていることも後に分かりました。それが、この地球という生命体と人の命とが連動をして成り立っていることでした。作物を得るための、それを人の口に届けるための作法が、この国では当たり前にあった事を思い出す時期がこれからなのでしょう。