仕事が仕事を連れてきた

年の初めに、へびさんの絵のお仕事をいただいた。
納期は厳密には決まっていなかったとはいえ、打合せもたびたび重なって、人にも手伝ってもらったりして、仕上げるまでにずいぶんとお時間をいただいてしまった。

できあがった絵はshiraoさんの協力により、綺麗に額装されて、精神学協会のセミナーでお披露目された。

そのセミナーの時に、岐阜の木曽川水系の話が出た。長良川で野菜を育てている方がいらっしゃるのだが、その野菜畑で野菜が育つ手伝いをしている河童の水神がいるとかで。

(長良川の河童さんかぁ……)

つい、広く知られているあの緑の甲羅とお皿をかぶった河童の姿を思い起こしつつ、長良川の河童に想いを馳せていたところ、全く違うヴィジョンが頭に浮かんだ。
青海波模様の羽織姿の、緑色の御髪をした美丈夫が、静かに佇んでこちらを見ている。
どうやら、先方に繋がったらしい。

(おやまぁ。長良川の河童さまは、またずいぶんと美形であらせられる)

みんなあの妖怪河童の姿だと思うなよ、皿も甲羅も背負っていないぞ、と念を押されたようである。
これは河童というか、○○童子とか、ナントカ水神と祀られそうなお姿かもしれない。

(あなたがお手伝いしたお野菜なら、確かに美味しいことでしょうねぇ。絵に描いてみたいほどの姿だなぁ)

そんなことを思って、のんびりとお話をしていた、その後から、河童の絵を描いてほしい、と実際にお野菜を育てている方と娘さんからご依頼をいただいた。

(また絵の依頼がきた……)と、今回は、姿も見た上、お一人だけの立ち姿の絵なので、仕上がるのは早かった。

ところがまたそこで話が終わらなかった。

数日後、会長が、「河童の話は聞いたか?」と訊ねてきた。どういうことかと詳しく聞いていると、どうやら長良川の河童の絵姿ができたという話をどこからか聞きつけて、ご近所の木曽川の河童が「長良川のだけずるい」と(?)へそを曲げ(?)ているらしい。

それでどうせならば、木曽川も揖斐川も、木曽川水系は揃えて絵を描いてしまえ、という話になっていった。

(話が雪だるまのようにころがっていく……)

ぽかんとしながら、とりあえず、また、絵筆をとることにした。