台所から宇宙へ9

他の会員へパン焼きは託したものの、積先生から「なんで、パンを焼かないの。」との伝言があり、当初は菌を作ればある意味お役目は終わりと思っていたのですが、やはりパンになってはじめて完成のようです。

さて、菌には光がありますが、パンになってみると光を宿してない事の理由が分かりません。何日も焼き続けますが自信がなく、それを食する家族の反応も今一です。そこでもう一度原点に戻る事にしました。

何故、菌を作るのか。

作られた菌の役割は、どういうものなのか。

その菌の未来は、どうなって欲しいのか。

という、思考の旅が始まりました。これは、ひとの人生の思考の方程式と同じです。人は、どこから来て、何をして、何処へ行くのかという問いと同じです。つまり、菌を作る始まりは、今、国内ではパン食人口のパーセントが高いため、日本人の腸内環境も変わってきています。昔は、白米、味噌汁、漬け物という食環境が、今や高齢者までパン食という食生活に変わりました。それにつれて腸内環境も変わっています。最近の生物学では、腸内細菌が健康状態だけでなく思考や気分に影響を及ぼすという研究結果が出ています。つまり、腸内細菌が心身の状態をコントロールしているということです。腸内で吸収した栄養素は、血液に交じり全身に巡ります。更に現代の高ストレス下では、血液の成分が変わり、海馬(記憶、学習)領域で神経に栄養を与える因子を生む遺伝子発現の低下がおきていると言われます。その腸内細菌叢へ光を宿った菌が届けば、心身への影響は然りです。

では、光を宿したパンの役割は、腸内環境へ光を届けることです。その結果、今までは「健全なる精神は、健全なる肉体に宿る」でしたが、「健全なる精神に、健全なる肉体が宿る」という事に変わり始めることになります。子育て時代に、健康を通して体や食物などの物質ばかりに目を向け翻弄しましたが、思考や気分が落ちついていれば自ずと家族が素直に関わり合え、病気にもなりにくい事とも合致します。

そして、光の菌の未来は、食文化は精神文化と言われるように、光を宿した食生活で健全なる子供の成長を目指し、やがて社会作りの礎に繋がっていることに気が付きました。

この思考のプロセスは、毎日発酵器の中のパン生地を眺めながらすすみました。それにより、ヒントを貰いながら、やがてこの思考した内容を胸に新たな気持ちでパンを焼くことにしたのでした。発酵をしたパン生地を発酵器から出したとき、隣に置いてあった仕込み味噌がやけに気になりました。思考のプロセスには、どうも味噌も参加をしていたようです。