台所から宇宙へ52

短い梅雨が明けて翌日からは三十度超えの気温に、庭先では涼やかにアジサイが顔を見せてくれています。平安時代には「味狭藍」「集真藍」と表記され藍色が主のようですが、浴衣の絵柄に登場するアジサイは色とりどりで、稚児の着るじんべいさんや浴衣姿は可愛らしいものです。目に映るだけで、身体に纏うだけで、水を現わすとも言われる意味のアジサイの薄水色から藍色が、体の水分と相まって涼しさを運んでくれるようです。可愛らしい手毬咲きやどこか懐かしい額アジサイの姿に、暫くは夏を楽しむ時間になります。

そのような中、ますます世界のニュースは騒がしく、終末期を作るみたいな戦い方を見せていますが、一週間後アメリカでは独立記念日を迎えます。かって、アメリカンドリームを目指し、世界から民族が集まり繁栄をめざしていました。耳障りの良いアメリカンドリームと言う言葉に、この国も三十年近く、留学生や日本の技術を送り込んでいました。そんな流れの中で我が家も、このアメリカの地に足を下したことが思い出されます。

ある日、留学中の子どもより「我が家の宗教は何と、ホストファミリーから尋ねられたので、なんて答えればいい。」という問い合わせがありました。子どもはキリスト教の学校に通っておりましたが宗派など知らず、答えを躊躇したそうです。尋ねたホストファミリーはご先祖様はヨーロッパ系のユダヤ人でホストマザーはボストン生まれでオレゴンへ引っ越していました。当時アメリカの歴史を旅行ガイドブック程度の勉強で渡米をし、実際に異文化交流で民族という事を肌で実感したそうです。子どもよると幼少期は、祖父母の信心に連れられ行った金光教に黒住教を知っており、更にお葬式は日蓮宗と聞いていたので、正直現状を話したようです。初めて自国の外に出てみて、宗教というテーマが何か大きな意味を成すと感じ取った時期だったと回想しています。

それに伴い、自身も自国を出てみて、他国の地において生存の条件の一つに宗教がかなり影響をすると実感しました。では改めて、自身の宗教はと考えてみましても、聖書を深く勉強したわけでもなく、礼拝堂ではお釈迦さまから各仏教宗派の教祖様の話や偉人伝などを学び、一つに特化したものはなく、その時期や場面、場所において、太陽、星、天神様、大木など、神頼みに近いのが現状でした。また、親戚を見渡せば神社関係者が多くいましたが、日本の神様方の知識はなく育ち、嫁いでから両親の神棚や仏壇へ手を合わす姿を見ながら、また、家の至るところに教えの御言葉や標語で心の整えを子どもと一緒に歩んだ気がします。また、新興宗教については、仕事上で色々触れた程度で、これも信仰には程遠い世界でした。

近年、世界ニュースにより西欧の一神教の名前が、身近になりだしました。そして、その一神教の中でも宗派が分かれ、新天地を求めて開拓されたのがアメリカですが、今では世界の宗教の同居がこのアメリカと言っても過言ではないでしょう。では、自国では、神道と仏教の二大宗教がほとんどでしたが、明治の頃より西欧に習えという、一神教の風を取り入れましたが、それは宗教の裏に隠れた戦争がセットでこの国に流入されていました。ついこの間までは、家々の神棚に伊勢神宮、出雲大社、産土神社、氏神様、水の神様、火の神様、お稲荷さんなどのお札が神棚にはずらりとお祀りされ、仏壇へは、先祖代々の御霊がお祀りされていたのが、ほとんどだったと思います。生活の中全般に神様は存在されて、道端での尊い石ころにでも心を寄せる民族で成り立っていたのです。しかし、昭和二十年ころを境に、この習わしが変化を始めたようです。人口も街も生活様式も変わり始めました。そして、生きていく上での礼節や人生を考える柱が揺らぎ、物質主体の時代に入りました。国内で教とつくのは仏教であり、神道は道であります。この道において、生きる世界のすべてへ心を寄せる道がこの国においては信仰心へと紡がれ、自身の魂を磨くことで信心を深めていくと考えます。

そして、ホストファミリーの示す入り口は、宗教の奥にある民族意識が、世界の地で生きてゆく上で、大きな生存理由になるのではと考えます。この国では、民族意識と言うより礼節や生き方の方に重きをおくので、今後の課題でもあります。昔、宮司であった祖父の遺言に「建国の日だけは、残してほしい。」と言っていた事を父が感慨深げに話したことがあります。やがて、数千年後には地球が一つになっているとも言われますが、暫くは出自のルーツと自国の成り立ちを知ったうえで、テーブルの上に歴史のテーマを置き、会話を重ね続けることで国家間の融和を進めていくプロセスが必要ではないかと考えます。

そして、教育現場だけでなく、家族のルーツや自国の成り立ちを出来るだけ大家族で話題にして、家族間の融和を推し進めることを望みます。その積み重ねで、ある時期が来ますと子どもはそれを材料に、生きる道を見つけるのではないでしょうか。