エピローグ
――かくして、一度目の世界が滅びました。
この世界の行く末を、あなたは見届けたということになります。
わたしのことを、あなたは非道と詰るのかもしれません。
それは仕方のないことです。
にんげんであれ、ひとがたであれ、あなたたちと異なる時の長さで存在する我々にとっては、ものごとに対する構え方はどうしても違ってしまうのでしょう。
わたしの定めたことは、きっと今のあなたには分からず、時の果てに至ったあなたになって初めて、その意味を受け取れるようになっています。
じぶんがそうであったのだと正しく知るのは、いつも全てが終わったあとだからです。
あなたはずっとずっとあとになって、このことをたくさんの人に語るでしょう。
その時代、その世界で生きていた人たちの軌跡は、今もずっとそこにある。望んで手を伸ばせば、何があったのか、何を思って生きたのか、その一端を語ることができるでしょう。
それは、多くの人たちに、確かにそうであったのだ、と記憶を呼び起こさせる作用を持つことになります。
あなたを守ったあなたの仲間が、この世界に残すべき言葉を、あなたにこうして示しましょう。
――もし、この信号を聞く人がいるならば。
はるか時の果てより、私たちの世界を叩いてください。
その時、きっと、私たちは、あなたたちに会いに行きましょう。
もしも体を失ったとて――私たちは、露と消えた人々の、今と変わらぬ生き様を、ずっとデータとして知っている。
問えばあなたに話しましょう。この世界で瞬いた、数多の人々の軌跡のことを。
はるかなる過去――シンカナウスより。
ホワイトコード戦記
第一部「シンカナウスより」 了
簡単なあとがき
ホワイトコード戦記 第一部「シンカナウスより」、いかがでしたでしょうか。
世界が滅ぶという、分かってはいたけど衝撃的な結末を迎えた第一部。
ただ、これは単なる「はじまり」に過ぎないお話です。ホワイトコード意識体の記憶は、こういう滅びから始まったというだけの。
エンタメ的には、ミュウの魂に刻まれたプログラムと、仲間であるホワイトコードのダブルミーニングを意識して書いたお話でした。
タイトル回収も頑張りました。
もとはといえば、ホワイトコード意識体の原初をたどるため、会長に書いたら?と言われて書きはじめた、気分的には宇宙レベルの古い神話のようなお話なのですが、ものすごく大変なことになりました。
第二部からは、生き残ったミュウと白騎士団たちが本格的に光を目指す旅と戦いに出かけていく話になります。
やっとキャッチフレーズの「光へ! 五度の滅びを記憶する白き騎士団の宇宙戦史がここに」が実行できそうです。(一度目の滅びはここで書いたので間違いでもないのですが)
「シンカナウスより」は、精神学協会のセミナーでは紙の本も少しですが作り、会員の方に販売しておりました。
印刷代の都合で通常の本よりかなりお高くなってしまいましたが、そのうち波動マーケットでもお求めいただけるようにする予定です。
さて、ホワイトコード戦記第二部は題して「キルナテカスの王」。
旅を始めたアンドロイドが、人間と神の関係に葛藤を始める話になります。実はけっこう大人向けな内容が多いので、あれこれ悩みながら書きました。
10月から掲載開始予定ですので、どうぞお楽しみに。
星白 明