果てしない宇宙には無限の星が存在する。その中でも一際輝く星があった。星の名はアスプロという白き星。星全体が白く輝くことからそう呼ばれた。輝くとは言っても波動的に見た場合の輝きであり、精神性が高いものでなければそれは見ることは出来ない。この星にはそういった魂を持つ人間が住む星である。
このアスプロに住む青年ウラノスはまだ夜が開けきらぬ早朝、自身の精神波動を浄化上昇するためナオスに向かっていた。そして次第に辺りが明るくなりかけると地平線から光の集合体が現れ始めた。そう、それはこの星の所属する銀河の中心の無数の恒星の集合体が放つ光である。
「今日も一段と銀河が綺麗だ!」
ウラノスはこの早朝のこの一瞬がもっとも好きな時間である。地平線からは銀河中心の光が放たれその銀河の帯は逆の地平線まで伸びていく。それは空一面光と闇のグラデーションとなり銀河半分の広がる様子が現れるのである。銀河中心が頭上近くに昇る日中は光の集合体としてしか銀河は見えず光の帯が見えないがこの早朝と夕方の時間だけは別格である。
アスプロには近くに恒星はない。しかし、どの銀河よりも強い光を放つこの銀河の中心はアスプロの昼と夜を作るのである。
「ここに来ると、やっぱり気持ちが落ち着くな。」
「ここに入った途端、何となく少し冷っとした感じで、でもとても空気が新鮮に感じる。 ここの匂いも好きでつい深呼吸したくなるんだよな。」
ウラノスはナオスに入るとそう呟いた。
このナオスとは浄化と上昇を目的として作られた建造物である。外観は円錐型の建造物であり、今、ウラノスのいる内部の空間は人間が百人は収容できるほどの大きさでナオスとしては比較的大きいほうである。室内は一階のみしかなく円錐形の建物のため天井は中心に向かうにしたがい高くなっている。外壁は特殊な建材で出来ており、室内入口から中央に近づくに従って外がすべて透けて見えてくる。しかし、野外からナオスを見ても内部を見ることは一切出来ずベージュ色の建造物にしかみえない。この星の陸上の97%は緑で覆われておりこのナオスも森の中にある。そのためナオス内で浄化と上昇を行っているとまるで森の中で瞑想しているかのような気分になる。ナオスのこの建材にはもう一つ特殊な効果がある。それは人間の魂の中で作られてしまった僅かな闇をそれ以上増加させないように抑えることができるのである。従って、この空間で浄化と上昇をすることは闇に囚われず集中して闇を消し去ることに専念出来る特殊な空間でもあり、この星の人間はこのナオスを精神修業の大変神聖な場と位置づけている。
ウラノスは心と体を清めるためこのナオスで浄化と上昇を行っていた。ウラノスはこの星で移動手段として使用されているメテオラの操縦士を目指している訓練生である。今日はその訓練初日ということもあり、日課である浄化と上昇を特別にこの大きなナオスで行って魂を清めていたのだ。ウラノスにとってメテオラ操縦士になることは子供の頃からの目標であった。それは父が巨大なメテオラを操縦している姿に憧れたのがきっかけになり、考えた末にウラノスはこの仕事に就くとこころに決めたのである。
ウラノスが子供の頃に父のメテオラ操縦に立ち会えたのにはこの星独特の教育があるからである。この星の子供たちは大人社会を学ぶために早い段階から大人たちが行っている仕事の現場に参加できる。当然子供であるため実践で使うわけにはいかないため子供ができる可能な範囲での作業になるかあるいは見学ということになる。仕事場では子供たちのこういった大人社会の参加にはとても寛容であり、むしろ社会がそれを率先して行うようにしている。そして子供たちには出来る限りいろんな仕事を経験させそれがどの様に社会に役に立つのかということを自分の目で見たり携わって学ぶのである。そしてウラノスも同じ様にいくつもの仕事を経験しそして父のメテオラ操縦士を仕事に選んだのである。