2.スコラ―

 この星アスプロの子供教育は通常、スコラーと言われる場所で行われている。そしてそこで教える教師となるものは若い者が務めることは出来ない。必ず一般社会を経験し規定の年齢以上の者が行うのである。それは、社会経験の無い者がいきなり教師として子供を教えては、子供に本当の社会というものが伝わらないからである。言葉だけでなく社会経験のある波動の持ち主の教師が子供たちに教えることで深く教えが伝わるのである。

 スコラーでは初めにこの星の言葉や記号化された文字を教えていく。口に出す言葉の響きの大切さ、正しい言葉の使い方から学び、それを文字として表現することを学んでいくのである。そして、さらに人間の心や意識、哲学などへと学びを進めていくが、決して一方的に教師が教えるのではなく教える側も子供たちと一緒になって考えながら導いていく教え方をする。子供たちにはある段階で大人になるまでに考えてほしいテーマが与えられる。それは「なぜ人間として生まれてきたのか」、それを誰とも相談せず各自が自分の中だけで考えるという条件で。教師は子供たちに答えは求めることはない。しかし、これからの人生の中で常に考え続けることを伝えるのである。子供の中には、教師にその答えを伝えに来る子もいたが、どの子供たちも共通した返答であり、それは真理に近い内容であった。流石にこの星に来る魂は皆精製された精神の持ち主であるがゆえに同じ結論に至るのである。ウラノスも例外ではなかった。スコラーでは子供たちがこの星で生きていく最低限必要な知識を学んだ後、ある段階から大人社会に参加し自分のやってみたいことや得意なことを決め、さらにその知識と技能を磨いていきゆくゆくはその仕事に従事するのである。

 スコラーでの子供の教育の中でもう一つ大切な教育がある。それは精神学を学び「光」と「闇」の存在を知ることである。すべての子供は、この星アスプロでは圧倒的に「光」多き魂である。しかし、それでもわずかに「闇」はあるためそれに飲まれないように浄化と上昇の正しい方法を教えられる。浄化をせず日々を過ごしていけば「闇」はやがては大きくなり襲いかかる時が来ることを子供たちは教えられる。それはどういう形で発現するかは人それぞれだがそうならないようにするためにも毎日浄化と上昇は欠かせてはならないよう子供たちは指導される。この星の家族の住居には必ず小さな円錐状空間のナオスが作られているため、子供たちは教えられた方法で浄化と上昇を毎日行い魂の穢れを浄化するように習慣化させている。これは子供だけでなく家族全員が行う大切な日課でもある。

 ウラノスがまだスコラーに通い始めた頃、子供たち全員でナオスに集まり初めて浄化と上昇の仕方を教わっていたときの話である。講師の先生が、浄化と上昇の説明に入る前に話があった。

「みなさん、いいですか今日はこの大きなナオスのホールの中で浄化と上昇を皆さんと一緒に行います。普段ナオス内は私語厳禁ですが、今日は皆さんのためにこのナオスは貸し切りになってますので声を出すことが許されてます。でも、浄化と上昇をはじめたら先生が『やめ』と言うまでは声を出さないようにして下さい。分かりましたね。」

生徒は皆で返事をした後、続けて、

「みなさんには浄化と上昇がなぜ必要かを何度か話しましたが、覚えてますか?」

と先生の質問に、数人の生徒が挙手をした。先生は一人の女子生徒を選び説明をお願いした。女子生徒は、

「浄化と上昇は、人間の魂の中の誤った想念や穢れなど「闇」の側面を消し去り意識も身体も「光」で満たすためです。「闇」を残せばそれはいつか自分の中に「魔」をもたらし自分の意識も身体も支配されてしまうからです。」

と説明すると、

「はい、その通りです。ありがとうございました。今の説明のように人の魂はもともと「光」以外に「闇」という側面も持っています。皆さんはまだ子供のため「闇」の側面は僅かです。しかし、これから大人になるに連れいろいろな経験をする過程で「闇」の側面を蓄積してしまうことがあります。それは、自分では気づかないうちに徐々に増幅していき知らぬ間に支配されてしまうのです。太古の昔、この星の人間は「光」と「闇」を同等にもって生まれてきたそうです。そうした人間が普段から自分の行いを観察し悔い改め続けることを止めてしまえば、少しの誤った想念で簡単に「闇」に覆われ、「魔」に支配されます。さらにそのような人間が増えだすと「魔」は人から人へとさらに触手を伸ばし人の間でネットワークを張り巡らしすべてを支配していきます。そして、もしそれをほっておけばその文明はいずれ崩壊するのです。」

と、先生は付け加え説明を終えた。