第3章 No.16 調査を拒否した調査員

「額の確定調査」では、事業内容を確認する「技術の調査」と経理書類を確認する「経理の調査」の二種類の調査が行われます。そこで、私は技術の調査を担当していました。調査は確か、午前十時頃に開始し、技術の調査はお昼を挟んで、大体午後二時ごろには終わるので、その後、全ての調査員で経理書類を確認し、夕方ごろには調査が終わるのが常だったようです。前年度はそうでした。

そこで、お昼休憩に入ったころ、私は経理の方の調査がどれくらい進んでいるのか確認に行きました。そうしましたら、、、。調査が全く行われていないのです。始まってさえもいないのです。どうも、私が用意した経理書類が気に入らない調査員の M さんが、頑として動かなかったようです。彼の主張は、「前年度に、全ての関係書類を抜き出したものを用意すると約束したはずだ。」というものでした。どうも、経理の付箋付きのファイルが気に入らなかったようなのです。そして、その調査員は JST (国立研究開発法人 科学技術振興機構)に所属している方でした。その場にいた文部科学省の経理の調査員 S さんがいくら「調査を始めよう。」と言っても聞く耳を持ちません。大学側の担当者も、他の調査員もオロオロしているばかりです。そして、H さんの言葉も、M さんの耳には届きませんでした。