それから間も無くして、確か10 月だったと記憶していますが、T さんが自己退職する、と発表がありました。T さんは、現場にある百機あまりの研究機器のほぼ全ての利用方法を把握している唯一人の方でした。そして T さん以外のスタッフが使用方法を知らない機器が沢山ありました。
なので、残されたスタッフで、その穴を埋めていかなくてはなりません。そこで皆で相談して担当する機器を割り振り、T さんに「使い方を教えてください。」と何度も何度もお願いしました。しかし、T さんはのらりくらりと交わしながら、私達の要求に答えてはくれませんでした。これは私の個人的推測ですが、自分がいなくなったことで、この部署が混乱に陥ればいい、という想いがあったのではないかと思います。そうすることで、自身の存在感をアピールしたかったのだと思います。
多分、このことも今の日本における大切な課題なのだと、私は思います。今の日本では引き継ぎがきちんと行われないことが多いからです。そして、この職場では、 T さんの自己顕示欲によってきちんと仕事の引き継ぎが行われませんでした。