祈り人としてのお役目を続けていったウラノスは、いつの間にか自身の能力だけで他の祈り人のレベルにまで上昇できるようになっていた。それは今までの浄化上昇とは質が異なっていた。ウラノスは知ったのだ。
「祈り人の皆さんのレベルまで上昇すると、この宇宙を突き抜けた遥かかなたから光を受け取り星の浄化、否、この宇宙の浄化までもおこなっているんだ。そんな星がこの宇宙には無限に存在しているのが伝わってくる。」
と言うことを。この宇宙が光の宇宙であり続ける所以である。
こうして長きにわたりウラノスは祈り人として七つのナオス・ヘプタを幾度もまわり続けた。引退する祈り人を送ってはまた新たな祈り人を迎えを繰り返し、いつのまにか七名の祈り人の中でも最古参の存在になっていた。そして、いよいよみまかる時期が近づいてきたことを感じ始めたウラノスは、祈り人としてのお役目引退に向けて準備に入った。
この星の人間の中でも精神性の高い魂は自分の死が近づくと徐々に食欲が無くなり、水のみの生活がしばらく続く。さらに素の状態でテレパシーのような能力が発現する。まるでメテオラ内で操縦士同士が同調し意識で話すかのように。
そして息を引き取ると肉体は腐敗せず消えて無くなるのだ。ただし、完全に消えて無くなるまでの時間は人それぞれ異なる。光多き魂の持ち主ほど早いと言われている。
ウラノスは最近食が細くなっていることに気づいていた。もちろんそれはアネモイもわかっていた。アネモイはウラノスの寿命がわずかであることを認めたくなかったため、いつもと同じ量の食事をウラノスに出していた。しかし、ウラノスの食事を残す量が日に日に増えるにつれアネモイのいつもの明るい声が徐々になくなっていった。いつもなら食べた野菜の出来を話すのだがそれもなくなったのだ。そして、ある晩夕食を済ませ片付けをしているときアネモイは少し涙を流しながら片付けをしていた。ウラノスが、
「アネモイ、どうしたんだ。」
と聞くとアネモイは、
「あなた..今日は..ほとんど..食べてないのね。」
と小声を震わせながら応えた。ウラノスは、
「僕は元気だから大丈夫だよ。心配させたらごめんよ。」
と言って慰めた。しかし、このときすでにウラノスはほとんど食欲は無かったのである。そして、いつの間にかウラノスは水を飲むだけの生活になっていった。
あるとき二人で畑仕事をしていたときのことである。ウラノスが野菜に向かって目を閉じ光の波動を送っていた時、アネモイは少し離れた場所からその様子を眺めていた。すると、ウラノスの体がゆっくりと半透明になるのである。アネモイは思わず心の中で、
「あ!」
と叫んだ。その瞬間ウラノスの体は正常にもどり、
「呼んだかい?」
と、聞くのである。アネモイはその一連のことで、もうウラノスには時間が無いことを確信した。その一件があった数日後、ウラノスが、
「アネモイ、気がついていると思うけど、そろそろだと思うんだ。
多分明日には...。」
と言うとアネモイは、
「覚悟は出来てます。」
と悲しそうに言った。そして、ウラノスは息子にもこのことを伝えるように話した。
翌日、ウラノスは息子に、
「お母さんのこと頼んだぞ。」
とだけ伝え、その後はウラノスとアネモイの二人きりになった。ウラノスはアネモイを見つめながら、殆ど忘れかけている赤き星の前世のこと、そして今世のことを振り返っていた。ウラノスはアネモイの心を読み最後に、
「アネモイ、また先に旅立つよ。
君のお陰でとてもいい人生だった。
本当に、本当にありがとう。」
と伝えるとアネモイは涙を流しながら、
「私もあなたと同じ道を歩んできてとても幸せでした。」
と言うと続けて、
「また私を置いて先に行ってしまうのね。」
と、アネモスが応えていた。ウラノスはゆっくりと目を閉じながら最後に、
「また...来世で...めぐりあえたら...」
と言いながら声は小さくなりフェードアウトするように聞こえなくなっていった。そして、ウラノスの肉体は時間を掛けずに静かに消えて無くなっていったのだった。
これが、光の宇宙にあるアスプロと言う白き星にて、人生を全うした一人の人間の物語であった。
白き星を去ったウラノスの魂は光の中にいた。
そして、声があった。
ウラノスの魂よ、お前の役目は終わり光の中に去ることが許されておる。
また再び白き星に転生することも。
しかし、ウラノスの魂よ、お前にはもう一つの選択肢を与える。
光の騎士となり闇多き星に旅立つという選択である。
それは、過酷な選択であるがお前は光の騎士として闇多き人類に光をあて覚醒させるだけの能力がある。
ウラノスの魂は、
「私は三つ目の選択肢、光の騎士となり旅立ちます。」
と言うと、光の声は、
勇気ある魂よ。
お前の向かう星を見るがよい。
この星は今までとは異なる次元の宇宙にある。
見ての通り灰色で覆われたとても汚れた想念波動の星で光も届かない。
その中に時々光の点が現れる。
あれは僅かに目覚めた意識体が発するものである。
宇宙を貫く光を放つものはごくごく僅かだ。
過去に少数のものがこの星から宇宙へ貫く光を発し私と会話したものがいた。
お前はそのものたちと同じ光を放つ魂。
しかし、お前と同じ魂の者たちを何人もこの星に送ったが、そのうちの多くの魂が闇に飲み込まれてしまった。
よいか、決して闇に飲み込まれるでない。
ウラノスの魂は、
「あなたは誰なのですか?」
と言ったが、それに対する応えはなかった。
ただ、最後に言葉があった。
光の世界に座をもつものとして
この地球で働きなさい
光の者として