翌日、ウラノスは連絡があったナオス管理施設を訪ねることにした。そこはウラノスたちの住むコミュニティにあるナオスに隣接している施設である。施設内には常時数名の職員がナオスの管理運営を行っておりウラノスはその一人の職員に声をかけた。
「昨日ご連絡を頂いたウラノスと申します。」
と言うと職員は、
「お待ちしておりました。突然お呼び立て致しまして大変申し訳ございませんでした。今回お越し頂いたのは、ナオス管理運営委員会からのご指名がありましてご連絡を差し上げた次第です。
では、早速ですが要件を申し上げます。ウラノス様は当委員会よりナオス・ヘプタの祈り人候補者として選ばれました。ご存知のように...」
と話は続いていった。説明はこうだった。
この星には七つの超巨大なナオスがある。赤道線上に五つと極に一つずつあり、これらを総称してナオス・ヘプタという。このナオスには通常の浄化上昇の場として一般に使用される以外に特別な用途がある。それは各ナオス・ヘプタに一名ずつ祈り人が入り七つ同時に星の浄化のための祈りの場として利用されているということだ。これは何百世代と続けられてきた神聖な儀式なのだが、この七名の祈り人のうち一名が近々欠員になる予定だという。その補充としてウラノスが次の祈り人の候補者として選ばれたということだ。職員は説明の最後に、
「あくまでもご本人の自由意志での判断になりますが、もし多少でも担う意思がおありようでしたら一度どこかのナオス・ヘプタに行かれることをお勧め致します。より具体的な説明や体験が出来るかと思います。現在のところ候補者はウラノス様一名のようですが、引き続き当委員会では他の候補者も選定中だということです。」
とのことだった。ウラノスは突然の話で一度持ち帰ってアネモイにも話してから決めることにした。ウラノスはなぜ自分にそのような話が来たのか疑問ではあったが、もし可能であればこのお話を受け入れようかと考えていた。その後、アネモイにこのことを話すと、
「あなた、やるべきよ!
私だったらぜったいにやってみたいわ!
ナオス・ヘプタは子供のころにスコラーで教えられていたけど、この星への祈りの場所でもあったのね。メテオラ操縦の時はナオス・ヘプタ周辺はいつもすごい光で満ちていたことを思い出すわ。」
とアネモイは返した。そこでウラノスは七つあるナオス・ヘプタの一つを早速訪ねることにした。
数日後、ウラノスはアネモイを連れ添って一番近くにあるナオス・ヘプタに乗客用メテオラを利用し、もちろん乗客としてだが、向かった。近くとは言うもののウラノスのいる場所からこの星の三分の一ほどの移動距離となる。しかし、メテオラの移動であれば短時間で可能だ。そんな移動中アネモイは、
「久しぶりね、乗客用メテオラで乗客として乗るの。私、ナオス・ヘプタにはいつか行こうと思っていたのよ。でも、なかなか入館許可がとれないからあきらめていたの。」
と話した。ナオス・ヘプタでの一般入館は公平性を期すために抽選になっており、これは一生涯に一度許可が得られるかどうかほどの確率なのである。従って、今回の件はアネモイにとっては思いがけない話なのである。ウラノスは、
「自分もこの歳になるまで一度も行ったことが無かったんだ。
アネモイ、遠くにナオス・ヘプタが見えてきたよ。操縦士の時はたまに眺めたけど、メテオラの航行高度から唯一はっきり見ることができるナオスだけあってやはり巨大だね。」
と応えた。乗客用メテオラの客室は、メテオラ中心に配置されている上下操縦室の周囲にドーナツ状に作られているのだが、その客室は操縦室のある側と反対側の壁面が離陸後透明になるため外の様子を望むことが出来そこから二人は外の風景を眺めていた。
二人はメテオラ降機後早速小型地上移動用メテオラでナオス・ヘプタに向かっていったが、近づくに従いその大きさにさらに圧倒された。このナオスは周囲を歩くとなると歩数にして約一万歩ほどもあるとてつもない大きさなのだ。
ウラノスたちはそのままナオス・ヘプタ管理施設へと向かった。そして、二人が施設に入るや否や、
「ウラノス様、奥様、お持ちしておりました。本日は遠いところからご足労頂き大変ありがとうございます。」
と、職員がエントランスで出迎えてくれた。ウラノスはあらかじめ今日ここに来ることを当委員会に伝えてあったため準備していてくれたのである。二人は別室に案内されそこでこのナオス・ヘプタについての説明を受けた。
「お二人ともナオス・ヘプタは初めてとのことでしたので簡単に当施設の説明を致します。
ナオス・ヘプタに入るには許可された者のみが入場できるこの星で最も大きな建造物です。内部は空洞でとても広いためメテオラでの移動となります。一般入場が許されたものはナオス・ヘプタの中心の限られたエリアで浄化と上昇を行いますが、祈り人はこのナオス・ヘプタの頂上にある特別な場所で星全体の浄化を行います。
一般のナオス同様、円錐状のナオス・ヘプタの地下も地上側と対照的に逆円錐の空間があります。お二人は元乗客用メテオラ操縦士とお聞きしておりましたので上下の操縦室と同じような構造と言うと分かりやすいかもしれないです。そして、地下の空間は超巨大貯水槽となっており、これも一般のナオス同様です。」
すべてのナオスやナオス・ヘプタの地下は説明のように地上と全く対照的な逆円錐状の貯水施設になっており、その清まった水はすべて地下からの湧き水で、あふれ出た水は生活用水として各住居へと流れ込む仕組みになっている。従ってこの星の住居はナオスを中心に放射状に広がって一つのコミュニティが形成されているのである。言い方を変えると、この星でははじめにナオスが建造されそこから周囲に居住やあらゆる施設が放射状に順次作られているのである。
ここまでの一通りの説明が済むと職員が、
「本日は祈り人が一名こちらにいらしてますので、以後の案内はその方に変わります。ナオス内にいらっしゃいますのでご案内いたします。」
と言ってナオス・ヘプタ内へと二人は向かった。
