69.新たな生活

 こうして二人は乗客用メテオラ操縦士として多くの実務を積み重ねその経験がさらなる操縦技能の向上と同時に精神性の向上にも結びついていった。そして時は過ぎ、ウラノスとアネモイに操縦士引退の日が迫ってきた。

 この星では長い間同じ仕事に従事できない決まりがあるため、規定期間を過ぎると引退し後輩に職を譲らなくてはならないのだ。それは、なるべく多くの者が生きている間にあらゆる仕事を経験出来るようにするためである。

 この星に生まれてきた人間は、生きる上での第一の目的が一人一人の精神性を成長させることにあり、皆そこに価値観を置いて生活をしている。他人と比較することや競い合う等と言う意識は無くしていき、むしろ他人を尊重し協調することに重きを置く。そして、皆に出来る限り平等に経験をする機会が得られるように仕事については一箇所にとどまらず異なる業種に就き、新たなことに挑戦し自身を磨いていける環境をこの星の社会システムは用意しているのだ。

 この星に生まれてくることができる魂は、異なる次元の宇宙で多くの経験や知識を刻みそこから光の道へと繋がったもののみが到達できる星。だからこそこのような社会が成り立つのである。逆に見方を変え、低次元の星の人類からしてみれば退屈でとてもつまらない星にみえるであろう。しかし、それは魂の経験が浅いことを意味するのかもしれない。

 二人はメテオラ操縦士引退後、ウラノスは若手操縦士育成のための教官へ、またアネモイはスコラーで子供たちの教師になっていった。二人とも指導者と言う道に進んだのである。その間に二人は子供を授かった。

 
ウラノスの魂よ
お前はこの白き星で幾度も転生を繰り返し精神を成長させ
それがアネモイの魂との出会いへと再び繋がったのだ
それがお前の今生の物語
ウラノスよ
これよりアネモスとの赤き星で途絶えた学びの続きをこの星で歩むがよい

 

 時の過ぎるのは速く、二人が指導者としての職務を全うしている間に子供は大きく育ち、いつの間にか両親と同じメテオラ操縦士へとなって巣立っていった。

 その後、ウラノスとアネモイは教官や教師の職からも退き小規模ではあるが畑を耕し野菜作りに励んでいった。そんな野菜づくりの中でも大きな発見があった。
 はじめはウラノスが小さな畑を作り作物を見様見真似で作ってみたのがはじまりだった。毎日少しずつ野菜が大きく成長するのがとても楽しかった。その後、徐々にアネモイも手伝うようになっていった。あるとき二人で作った野菜を初めて食べたときのことである。

「野菜の味が以前と変わったわ。」

と、アネモイが言うのである。ウラノスだけで作った野菜と比べても、明らかに美味しく感じるのだ。アネモイは、

「あなた、野菜さんにちゃんと声をかけてあげてる?」

と、言われてしまった。アネモイは毎日野菜に声をかけたり、土壌にも声をかけていたという。ウラノスは、

「あ!全くしてない。」

と、思い出したように言った。ウラノスは物を扱うかのように畑仕事をこなしていたことに気付かされた。そのときウラノスは昔のことを思い出した。新米メテオラ操縦士のときに起こしたトラブルの一件である。あのとき知ったことが活かされてないことに不甲斐なさを感じていた。ものにはすべて意思がある。それをつい忘れてしまっていたことに悔やんだと同時に気が付かせてくれたアネモイにとても感謝した。

「今度からは、感謝しながら声をかけたり光の波動を送ってみるよ。」

とウラノスは言った。二人はその後も今まで以上に野菜作りというものを勉強しどうしたら美味しく元気な野菜が出来るか研究していった。ウラノスはこころの中で、

「メテオラの操縦は確かにとても高度だったが、野菜一つ育てるのもとても奥が深い。メテオラ操縦のように人の精神性がすぐ表に現れるのに対して、植物は時間をかけて成長させるためその間ずっと見守らなくてはならない。短期間で結果が出ないだけに良し悪しの判断が難しいんだ。」

と思い、改めて美味しい野菜作りの難しさを知った。しかし、その後の二人で作っていった野菜はどんどん質が良くなり美味しくなっていったのは言うまでもない。

 二人はこの経験から、時にはスコラーの子供たちに畑仕事を教えたり収穫物を近隣の方々に分け与えるような活動を行っていった。これも子供たちの社会経験の一環であり未来のためである。そんな畑仕事の毎日でも毎早朝になると二人はナオスにいき一緒に浄化と上昇を行い意識も身体も清めていた。

 こうして穏やかな日々が続いたあるとき、ウラノスにナオス管理協会から連絡がきた。それは協会に出向いて頂けないかとの依頼であった。ウラノスは協会に呼ばれるようなことは身に覚えがないため不思議に感じていた。