ウラノスはメテオラ操縦許可が下りてからは、操縦技術が上達した現在でも時間さえあれば必ず巨大ナオスでの浄化上昇を欠かさず続けていたのだが、そんなあるときウラノスは偶然ナオス内でアネモイと出くわし、二人は浄化上昇を済ませた後、久しぶりにお互いの近況を報告しあった。
「ウラノス、あれから操縦の方はどう?
私は今のところ順調だけど、ウラノスの話を聞いてからは体調や精神面で違和感があると思ったら操縦は自主的に中止してナオスにいくようにしているわ。」
とアネモイが話すとウラノスは、
「僕もあれから出来る限りナオスに行くように心掛けているんだ。
ところで、ナオスで出会うなんて初めてだね。」
と返すと、アネモイは、
「私たち、いつも勤務時間や移動先が異なるから同じ場所で偶然出会うなんてことはまず無いものね。でも、ここに来ると本当にこころが落ち着くわ!」
と応えた。ウラノスは、
「アネモイはとても自分に素直だからこころの奥底で起こっていることを純粋に受けとめて危険と感じたら操縦を辞退できるんだろうね。
僕はそこが出来ていなかったのが問題だったんだ。あのときは本来メテオラ操縦を辞退するべきだったんだ。
でも今はとても順調だよ。問題を起こして以来、鍛錬して深く自分の奥底まで浄化できるようになったお陰で前よりもメテオラ操縦がよくなってきたというか繊細になったんだ。メテオラとの一体感が今まで以上に深くなって、まるでメテオラが自分の体の一部のようにコントロールできて同時に会話しているかのように意識が繋がるんだ。」
と言うと、アネモイは、
「その感覚私も分かるわ。
でもよかったわ!私、心配してたのよ。ウラノスのこと。
でも安心した!」
と言ってさらに話を続けた。
「私ね、実は乗客用のメテオラ操縦士目指しているの。それが私が前から思っていた目標なの。それで今度、乗客用メテオラ操縦士になるために上級訓練生の申請に行こうと思っているわ。このことはまだ誰にも話してないから、内緒よ。」
と、先にアネモイに切り出されてしまった。自分も同じことをアネモイに話そうと思っていたからである。ウラノスはアネモイが上級クラスを目指していたとは少し意外だった。いままで全くそのようなそぶりを見せたことが無かったからだ。ウラノスは、
「僕もなんだ。父が元乗客用メテオラの操縦士なのは知っているよね。僕が子供の頃に父の操縦を見て憧れていたことも。訓練生になった初日の講習で教官と話していたの君も覚えているでしょ。」
アネモイは、
「それじゃ、また一緒に申請を出しに行きましょうよ!
最初に出会ったときのように!」
と、言うとウラノスは、
「あれは偶然出会っただけだけどね。
それにあの時、突然アネモイ泣き出しちゃったよね。」
と、言うとアネモイは、
「え!何の話!?」
とあのときの出来事を全く覚えていなかった。あの瞬間は間違いなくアネモイではなくアネモスだったのだとウラノスは確信した。アネモスの魂がこの星で再びフォティアの魂に出会った瞬間だったのだと。
その後二人は申請を終えたのだが、ウラノスだけその日面接が行われた。一度メテオラで問題を起こした経歴があるためである。しかし、面接では問題を起こしたことは一切問われず、問題を起こした後自分がどのような行動をしたかを問われた。ウラノスは自宅で浄化と上昇しようとしたときに突如あらわれた映像によって受けた影響のことを説明し、そして父親からの助言に従って自分自身を深く分析したことやそこで分かったこと学んだことをすべて話した。面接官は、
「そうでしたか、よくわかりました。
君が経験した一連のことは今後の訓練にきっとプラスになると思います。
ここでの話はオフレコですのですべて記録には残りませんからご安心下さい。
君のお父様のアドバイスはやはり的確ですね。
尊敬致します。」
と、言って何事もなく終わった。
数日後二人共申請の許可がおり乗客用メテオラ操縦士への訓練が始まった。訓練はウラノス、アネモイを含めて六名になり、講習の教官は中規模メテオラのときと同じ教官であった。講習内容は、と言ってもすでに皆実務経験者なので技術的な面では大規模メテオラと中規模メテオラとの異なる点や乗客が乗った場合でどのような違いがあるのかを詳細に学習し、基本的には技能面のトレーニングに最も時間をかけて行われていった。訓練当初の教官の説明では、
「皆さんには乗客用メテオラの場合、操縦者が二名必要であることはすでに以前の訓練で説明したのでその理由もご存知でしょう。
乗客の精神状態が機体にも影響が出るため操縦者の一名が乗客の精神波動を安定させる役目を主体的に行い、もう一名が操縦を主体的に行います。これは両方出来ないと乗客用メテオラ操縦士は務まりません。
そして、大切なことがもう一つあります。それはこの二人の操縦者の相性的なことです。こればかりは努力して必ずしもどうこう出来るものではありません。実地トレーニングを行う中でいろんな操縦者と組んでいただき細かくデータを収集していきますので一通りのトレーニングが済んだところで誰と最も相性が合うかを公開します。」
と教えられた。技能訓練では、シュミレータによる模擬操縦で何度となく地上訓練を積み、その後、実地トレーニング用の小型タイプ乗客用メテオラで訓練を積んでいった。そして、操縦訓練も中盤に近づいた頃、アネモイはウラノスに、
「私達、だれと相性が合うかしらね。楽しみね。ウラノスだったりして!」
と、アネモイの心の中ではきっとウラノスになると確信していた。ウラノスは、
「僕もそう願っているよ。」
と応えたが少し疑問を感じていた。