3.浄化と上昇

 先生が浄化と上昇について補足説明を終えると続けて、

「はい、浄化と上昇の必要性についての話はこの辺にして、それでは実際に皆さんとやってみましょう。みんな少し広がって自分がリラックスできる体勢になって下さい。横になってもいいですし、胡座をかいててもいいです。でも、決して眠ったりはしないで下さい。」

と、言われた。ウラノスは、そのときは皆の様子を見てから両膝を軽く抱えて床に座っていた。再び先生の説明に入った。

「それでは皆さん目を閉じましょう。そして、まず呼吸を整えていきます。呼吸は腹式呼吸をしてみて下さい。自然に鼻から息を吸ってお腹に貯めて、お腹に貯めた息をゆっくり鼻から吐いていきます。ゆっくり、慌てず、頑張らない自然な呼吸です。もし、今の体勢で呼吸が辛いなと感じたら楽な体勢を探してみて下さい。」

ウラノスは、そのままこの体勢を維持しながら続けた。先生は、しばらく子供たちの様子を見ていた。そして、皆それぞれリラックスできる体勢が定まったのを見計らい続けて、

「先生の言うようにイメージしてみて下さい。自分の頭上高くに光が輝いています。その光は空よりも高く宇宙をも貫く一筋の光です。その光は自分に降り注ぎ自分の中に入り身体一杯に光を満たしてくれます。光で満たされたら、イメージで自分の身体が徐々にその光の道筋に沿って空に宇宙にとどんどん上昇していって下さい。そして、...」

と説明を続けていった。ウラノスは先生の説明どおりに光の道筋に沿ってどんどん高く上昇していった。それはこの星アスプロを眺めるぐらい高くなり、さらに周辺の星々を眺めるほどになり銀河を見下ろす高さにまで至った。そしてそのままどんどん光の道筋に沿って宇宙を貫いて上昇していったのである。子供たちは皆純真無垢で素直なため簡単に浄化と上昇に至っていった。ナオス内は光りに満ち時が止まったかのような静寂がしばらくの間続いた。ウラノスの身体も光に満ちていた。どんどん光の中に意識も身体も吸い込まれるように上昇し光の中に入った途端、両膝を抱えて組んでいた腕が離れその衝撃で浄化と上昇から解かれてしまった。ウラノスは、

「しまった!」

と心の中で呟いた。ウラノスはそれ以後集中できず、目を開けて周りの皆の様子を見渡していた。そのとき、一人の子供の身体が少し浮いているのを見たのである。ウラノスは思わず先生に向かって、

「浮いてる子がいます。」

と声に出してしまった。その途端子供たちは集中が切れ、浮いていた子供も床に降りてしまった。先生は、

「ウラノス、先生が合図するまでは声を出さない約束でしたよね。いいですか、これは皆さんもよく聞いてて下さい。自分以外の人が目に見える形で特殊な状態になっていたとしてもそれに囚われてはいけません。」

と説明されると、すかさずウラノスは、

「先生、でも僕も浮いてみたいです。」

と言うと、先生は、

「今、先生はなんて言いましたか? 囚われるなと言いましたよね。正しく浄化と上昇ができれば光を見る人もいます。肉体も浄化され氣のめぐりが良くなり暖かくなる人、体が軽くなり人によっては身体が浮くこともあるでしょう。言葉が聴こえるかもしれません。でも、自分もそうなりたいなどということを考えてはいけませんし、またその現象が起きてもそれに囚われてもいけません。それはただの結果でしかありません。皆さんに浄化と上昇を始める前に浄化と上昇の必要性について説明しましたね。浄化と上昇したことで、表面上に現れる現象を求めるのが目的ではないのです。ウラノスも皆さんも分かりましたね。」

と、優しく先生はみんなに諭すように話した。ウラノスは素直に、

「はい、先生分かりました。」

と、返した。ウラノスは、それ以後浄化と上昇を行うときは先生が言われるように決して囚われないよう努めていった。そしてウラノスは家族と暮らす住居に作られたナオスで毎晩一人で浄化と上昇を行っていた。あるときウラノスが浄化と上昇状態にあるとき父がその様子をそっと見ていた時があった。父はその様子を見て、

「この子も強大なメテオラを動かす才能がありそうだな。」

と心の中で思った。そのときのウラノスは僅かに身体が床から浮いていたのである。ウラノスは翌朝父から、

「ウラノス、昨晩の浄化と上昇はよかったぞ。その調子で続けなさい。」

と伝えられ、ウラノスは嬉しかった。自分では先生に言われたとおりのことを行い続けていたのだが、その判断基準というか良し悪しまではよくわかっていなかった。しかし、父の言葉は大きな自信へと繋がっていった。