16.体験談

 それは、ウラノスが子供の頃の大人社会の学びでの体験の話である。ウラノスはいくつかの体験の中で住居建設の現場に行ったことがあった。住居の建設にはまずその土地の地質や波動調査から始まるのだが、ウラノスはその段階から参加していた。現場ではすでに専門業者の調査が始まっており、ウラノスはその様子をずっと観察していた。その地質業者は遠くからその土地をしばらく見ているかと思うと、特定の場所に行きその場でしばらく目を閉じているかと思えば地面にしゃがんで掌を地面に当てたりするのである。その作業を繰り返し行っているのを見ていて、ウラノスはその行動が不思議でその業者に質問した。

「今、地面に触って何をしているのですか?」

地質業者は、

「こうやって触ると地面の奥底までのいろんな状態が分かるんだよ。」

と教えられた。さらに続けて、

「適当な間隔でこの作業を行うと、この土地の地盤や地質、そして波動の状態が分かってね、少し問題があるようなら地面に光を送って波動の調整をするんです。その前段階として、まず土地全体を見渡したり特定な場所に移動してその場の空間波動を確認します。地面の中の波動状態はその周りの空間にも現れるからね。」

と、説明された。ウラノスは自分も真似をして地面に触れてみたが、良し悪しが全く分からなかった。すると地質業者は、

「ここの地面を触ってごらん。何か感じないかな?」

と言うと、ウラノスは、

「少しピリピリするかな?」

と応えた。さらに

「この場所だとどんな感じ?」

と少し離れた場所の地面を指定した。ウラノスは、

「こっちは何となく暖かさを感じます。」

と、応えた。地質業者は、

「その感覚は悪くないと思います。ここの地面は波動に乱れはないです。今感じたのは波動の良し悪しではなくて地下に眠っている鉱物の種類や地質を意味します。今みたいな感覚をさらに細かく私達は分析することができて、例えば、その物質の出す特徴的な波動でどんな鉱物がどんな状態にあるのかも分かるんです。」

と説明された。ウラノスはただただ感心していた。すると業者の方がいくつかの名前が記載されている元素の結晶サンプルをウラノスに渡し、

「それじゃー、ちょっと実験してみましょうか。この名前の書いてある392種類の結晶サンプルはこの星にあるの天然元素と人為的に作られた元素の結晶です。このサンプルから自由に好きなだけサンプルを抜き出して並べて、その上に私に見えないように布を被せてください。私は作業を続けているので準備ができたら教えてください。」

と言われ、ウラノスは考えながら十種類ほどのサンプルを並べていたが、途中でサンプルを一つ地面に落としてしまった。ウラノスはそれを拾い上げようとしたとき、地面に落ちていた石に目がいった。ウラノスは純粋に、

「ここに落ちていた石でも言い当てれるのかな?」

と思い、一つだけその場に落ちていた石を並べてみた。ウラノスは少し離れた場所で作業している地質業者に向かって大声で、

「並べ終わりました!」

と言うと、地質業者が近づいてきた。そして、

「それでは、端からサンプルの名前を言い当てていきますね。私が名前を言ったら布を外して下さい。」

と言うと、端から手をかざしていった。地質業者が並べた結晶サンプルの名前を言うとウラノスは布を外し名前を確認し、

「正解!」

と、また次のサンプルの名前を言った後、布を外すと、

「正解!」

と次々と言い当てていくのである。最後に落ちていた石に地質業者が手をかざすと、

「ん!これは...ん..? これは私のもってきたサンプルではないですね。」

と言い、さらにその鉱物を構成する元素と波動構造などを詳細に話し、

「もしかしたらこれはこの場所にあった石ではないですか? この場所の波動も写り込んでいます。」

と言われた時は、ウラノスは驚いた。ウラノスは、

「ごめんなさい、そうです!」

と言い、とても感激したことがあった。地質業者は、

「最後のここに落ちていた石が一番難しかったですよ。サンプルは単一元素を結晶化させ純度が高いため特徴がはっきり出るのでとてもわかりやすいのですが、その辺に落ちている鉱物などは実際いろんな元素が混じり合っているので分析するにはそれなりに経験が必要になるんです。私達は、この能力を使って先程説明したような調査と波動調整を行っているんです。」

と言われ、ウラノスはその話を聞いてて感動したのだった。

 そんな経験もあってか、同様の能力のある波動調整班のスタッフをウラノスは尊敬していたし信頼していた。彼らに任せれていれば安心だと。