13.製造と解体

 責任者の製造工場の説明が一旦終わり、訓練生達は各自見学通路を通って製造工場内を見学していった。しばらくして一人の訓練生が責任者に、

「質問があります。」

と言うと、皆その訓練生の方に注目した。その訓練生は、

「この工場内でメテオラが完成に近づくにつれて、作業中誤ってメテオラが浮上するようなことはないのですか?作業されている人によってはメテオラに光の波動を送っているのがみうけられますが、大丈夫なのでしょうか?」

と質問すると、責任者は、

「時々、訓練生で同じ質問されることがありますが、いいところに気が付きますね。実はこの工場内のメテオラを組み立てているエリアの下には皆さんすでに波動制御理論を学んだと思いますが、その理論を応用して作られた特定波動を減衰させるアッテネータが埋め込まれており浮上しないよう制御されています。この波動アッテネータはメテオラのドッキングベイにも同じものが使用されています。」

と説明すると、続けて同じ訓練生が、

「一台の大規模乗客用メテオラを完成するのにどのくらいの期間かかるのでしょうか?」

と再び質問すると、責任者は、

「そうですね、五、六年はかけます。これには理由があります。メテオラは大きくなればなるほど寿命が短くなりますが、ちょうど五、六年というのは中大規模メテオラの寿命にもなります。私達は必要以上にはメテオラを製造しないためこの寿命の周期に合わせて作っているのです。メテオラを安定した超高速航行させるには操縦者だけでなくメテオラ自身も光の波動を十分定着させる必要があります。そのためには今の我々の技術水準では寿命と同じだけの期間を必要とするのです。逆に言えば光の波動の定着期間が寿命と何か因果関係があるかもしれませんがまだ完全には解明されていません。しかし、現段階でわかっていることの詳細については後ほど講習で説明いたします。」

と、答えた。するとまた別の訓練生が質問した。

「寿命がきたメテオラは先程移動中に説明のあった解体工場で解体するのですか?」

責任者は、

「はい、そうです。ちょうど解体の質問が出たことですので、皆さん解体工場に移動しましょう。それでは工場移動用メテオラに乗ってください。」

と言われ、訓練生達は皆、再び工場移動用メテオラに乗り込んだ。訓練生達を乗せたメテオラは工場の外に出て移動すると思いきや地下通路に降りていった。責任者は、

「敷地内の三つの工場は地下で繋がっており、工場間の製造部材の搬送などもこの地下通路を使って行われています。」

と説明された。地下通路内は白く光る壁によりとても明るかった。この星では壁などの建材に光を閉じ込める技術があり、その光量の半減期は十年ほどになるため一度光を注入すれば長期間光り続けることができる。この地下通路に限らずあらゆる建造物にはこの技術により室内や通路など、もちろん工場内も明るさを保てるのである。地下通路を進むと時々倉庫らしき部屋がいくつも目に入った。

「この地下通路の横にいくつかの部屋があるのに気づかれたかと思いますが、これらはメテオラの部材を納める倉庫になります。部材はすべて以前解体したメテオラのものです。」

と責任者の説明があった。そしてしばらくすると解体工場に到着した。訓練生はメテオラから降り、再び責任者の説明に入った。

「ここがメテオラの解体現場です。見ての通り解体工場内部は製造工場となんら変わりません。今、解体中のメテオラは貨物用ですが、解体が始まって間もない機体のためまだ外観がわかります。今行っている作業は外装を外している最中ですが、外された外装はその隣の現場で波動コーティングされたバロスを波動分解により外装から分離し同時にバロスは吸引され一箇所に集められていきます。」

ウラノスは、

「集められたバロスはどうなるのですか?」

と責任者に質問すると責任者は、

「一旦地下室の波動調整倉庫に持ち込まれ最低一年は寝かします。その後バロスの状態が良ければ新たに製造されるメテオラや修理されるメテオラに使われます。その他メテオラに使用されていたものもすべてが解体されこのように再利用されます。」

ウラノスは、

「すべて再利用するのですか?」

と確認すると。責任者は、

「はい、100%再利用です。この星では当然の話ですが、すべて人工的に作るものは100%元に戻せることがもの作りを行う者のルールです。でなければ人工物は作ることは許されないのが原則です。メテオラに限らずすべてのものは作りっぱなしではないということです。それがメーカーとしての使命です。みなさん子供の頃から知っていることですので今更話すことではないですが、私の言いたいのは巨大なメテオラも例外ではないということです。」

と説明された。そして、責任者はここでバロスに関する面白い話を訓練生に話してくれた。