こうして始まった訓練生の講習は進み基礎理論から応用理論へと学んでいき、また同時に実習も行われた。実習では実際の訓練用小規模メテオラを使用した操縦訓練や内部構造などを学び、一通りの小規模メテオラによる訓練が終了した時点で訓練生たちは中大規模メテオラによる講習や訓練へと入っていった。そのためしばらくはいつもの訓練施設を離れ中大規模メテオラ製造工場での講習となった。その工場施設には中規模訓練用メテオラが常備されているため実習もそこで同時に行われる。工場は訓練施設から離れた場所にあるため全員小型メテオラで移動する必要があった。長距離を超高速移動する中大規模メテオラとは異なり比較的近い場所へ移動する数十人乗りの小型メテオラはゆっくりとした速度で比較的低空を移動していく。その間、アネモイとウラノスは会話が弾んでいた。アネモイは、
「ウラノス、私、メテオラ製造工場は子供のとき大人社会学習で見学したことあるの。まだ私子供だったからかもしれないけど、工場がとても広くて大きく感じたのを記憶しているわ。そこで、小規模メテオラを作っているのを見学したのよ。でも、今回行く工場は中大規模クラスの工場だから私少しワクワクしてるの。」
と言うと、ウラノスは、
「僕はメテオラの工場に行くのは初めてなんだ。だからとても楽しみにしているんだ。どうやって大規模メテオラを作っているか興味深いよね。いろんな知識を習得した今の段階で改めてメテオラ製造過程を見学するのはアネモイにとってもきっと新鮮かもしれないよ!」
そんな話をしている間に中大規模メテオラ製造工場エリアが見えた。それは緑生い茂る木々の中から突如現れた。その途端、小型メテオラは上空へと高度を上げた。小型メテオラの乗客室からは外が見渡せるため上空から工場敷地全体の様子がよく見えた。
「ウラノス、見て見て、上から工場を見たの私初めてだけど、こんなふうになっているのね。」
とアネモイは外を眺めながら話した。ウラノスは、
「上空から見ると綺麗と言うか、なにか幾何学的な感じの施設だね。」
と応えた。それは、工場エリアだけポッカリと円型に木々が生えていない敷地があり、工場施設は例えるなら円形状の敷地内にちょうど正三角形をはめ込みその各頂点に丸い巨大ドームの建造物が三つ配置されていると言ったところだろうか。そして、その中心には大規模メテオラが十機は余裕で着陸できるほどの敷地があり、訓練生たちの乗る小型メテオラはそこに着陸した。訓練生たちは小型メテオラから降機するなり皆同じように、
「わー、広いな!」
とその工場と敷地の大きさに感動していた。教官を含め訓練生全員が降りると工場責任者が現れ、
「訓練生の皆さん、ようこそ、私どものメテオラ・ファクトリーへ。私が当工場のガイド兼講習を務めてまいりますのでよろしくお願いします。」
と、言って出迎えてくれた。訓練生は皆整列し責任者に挨拶をした。その後、工場施設内移動用のメテオラで工場内部へと向かった。移動中に責任者の説明があった。
「この敷地には皆さん上空からも見てわかるとおり三つの大きな工場からなっています。それぞれの工場は役割が異なっており、今向かっている工場はメテオラを一から製造する工場です。もう一つは大規模な検査修理などを行う工場であり、最後の一つは完全解体するための工場です。」
説明を進めている間に訓練生を乗せたメテオラは工場内部に入っていった。すると巨大な製造途中のメテオラが眼の前に現れ、訓練生たちはその大きさに思わず口を揃えて、
「わー!」
と声が出た。その後訓練生たちはメテオラを降り歩いて製造中のメテオラの見学をさせてもらった。責任者は、
「今、ここで製造中のメテオラは乗客用の大規模タイプです。見ての通りまだ外装がありませんので中の様子がよくわかります。大雑把に構造を説明すると、コントロール・ルームが中心にありその外側に客室があります。さらに、外周には緊急時バックアップ光動力エンジンが四機備わっています。」
ウラノスはその様子を見て、
「コントロール・ルームってあんな風に二つ上下にくっついているんだ。子供の時お父さんと乗り込んだのはあの上側の部分なんだ。」
と呟いた。二つのコントロール・ルームはナオスのように円錐形状であるが、下のコントロール・ルームはその円錐を180度ひっくり返した状態で上下二つの円錐底面同士を接合しているのである。責任者は説明を続けた。
「そして上下二つあるコントロール・ルームを中心に磁力線のように客室からその他の設備までも含めて囲っているのが波動増幅合金線ですが、ご覧の通りまだ製造途中です。すべての合金線が張られると綺麗な楕円形が出来上がります。その後外装がつけられバロスがコーティングされていきます。このようにメテオラは中心から徐々に外側へと組まれていきます。また、製造するのにも短期間では行いません。使われる部品には何度も繰り返し光の波動を送り、メテオラ全体が安定した光の波動を定着しているかを確認しながら作業を進めていきます。」
アネモイは、
「見ていると芸術作品作っているような感じで美しいわね。」
と言うと、
「うん、僕もそう思ったよ。見入ってしまうね。」
とウラノスは返した。