義母 最後の大仕事 (2)

 

  亡き姑の寝ている布団を囲い、隣部屋の妹夫婦と姉を呼び、私、高田弘子さん、鳥羽里美さんの六人が見守る中、姑の口元は動き続けていた。例えていうなら、水車の柄杓がコトンコトン、そんな感じである。1分ほどは続いただろうか、私はその場にいない夫のために、動画を収めた。・・・と、高田弘子さんは、目を閉じて何かを聴こうとするように耳を澄ました。高田さんの妹の鳥羽さんは、「お義母さんの魂が、今降りてきている」と。高田さんはしばらくして目を開け、お義母さんが話したがっている。『私の合わせた手の上に、皆の手を順番に重ねていってほしい。その光景を観たい』と言っている。という。スポーツの試合前など、手を重ねて気合を入れるあのポーズである。その言葉を言い終えるや否や、姑の口元の動きが止まったのである。本当にあった不思議な話、義母はそうやって、兄妹の中を取り持ったのだ。感動の場面だった。なぜなら私たち兄妹は、会社経営していた義父の死後、跡を継いだ夫と妹の間には深い溝があったのだった。その溝の深さはたとえ姑の体調が悪くなり、いよいよ死を間近にしていたときさえも、元通り仲良くなることなど考えられないほどだった。嫁の立場である私は、時に怒りさえ感じながらもこのままではいけないと必死で仲を取り持ったこともあったが、当然埋まることのない確執があった。あるいは仕方がないことだとあきらめていた。それが、である。夫は高田さんの話を聴いて、皆で両手を次々と義母の手の上に乗せ、私はありがとうと心の中で唱えた。本当に長い月日の確執は一瞬にしてうそのように笑顔で話をする仲良い兄妹にもどったのだった。高田弘子さんがその場に居なければ、この結末はあり得ただろうか。義母は生前この状況を夢にまで願っていたことだろうと思うと、感動で涙があふれてくる。義母に、そして高田さん姉妹に感謝の気持ちでいっぱいになる。義母は最後、夢を果たして旅立っていった。