第3章 No.1 T さんの置き土産

当時、私が勤務していた大学は文部科学省の補助事業に参加しており、私の給与の半分はその事業の補助金から出ていました。補助事業に関わる書類を作成する担当者は、私が所属していた部署の二名と、研究を支援する事務部門の一名から構成されていました。

私が働き始めてからしばらくして、その事業の前年度(平成24年度)の「額の確定調査」が行われました。確定調査の準備をしている時にスタッフの方からその事業の内容について簡単に説明を受け、「多分〇〇さん(私)が担当することはないと思います。」と言われたので、その言葉を信じ込んでいました。

ところが、その事業の主たる担当者であった T さんが 11 月から有休消化に入り、補助的な立場にあった方も 9 月から体調不良で休職中で、12 月にはそのまま退職してしまうことになりました。現場を担当する二人が同時にいなくなってしまったのです。なので、次の担当者を決める必要性に迫られました。

そして12 月になり、文部科学省で来年度の当事業についての説明会が開催される、と言う連絡が入りました。センター長である教授から、その説明会に参加してもらえないか、と請われたので、私は引き受けることにしました。