<第一章>その三

第一章 試練は、学び、ということについて

その三)遺伝子と思考の関係

人知ではない領域からの情報として、人間の思考力は遺伝的に決まっているという話があります。つまり、モノゴトの本質を見極めるための思考力は、遺伝子レベルの情報の中に組み込まれていると考えられるのです。そして、その思考力を育てるものが、言葉というものです。言葉なしでも、数学的に考えるということなら、数式でもよさそうなものですが、それでは、自分と他者の区別ができないという印象があります。もっというなら、人間の場合、自分と他者との関係性にこそ、思考系は働くようにつくられていると見ることができるのです。幼い頃は、母の愛情を最大限に受け、青春期に到れば、恋愛の対象の人間に注目され、社会に出れば、仕事において良好な人間関係をつくり、家族ができたら、そのひとりひとりの幸福を願う…。それが普通で、そこには、愛情や感情という人間的欲求の先にある波動的情緒を安定させるために、人間は考えて行動するというプログラムが存在しているのです。つまり、自分と他者の波動的な調和なしに、人間の思考力は成長しないということです。良質な愛情に育まれた子供の脳内では、こうした自己と他者の関係性の基本が、愛という波動として定着します。ここが人間性というものの出発点なのです。

(つづく…)

二千二十二年 八月十二日 積哲夫 記