五感にふれるもの

 

「触れる」「振れる」

そのような感覚を大切にしたいと長年思っていました。

冬から春の気圧配置に変わり、一気に春の花が咲きはじめました。庭先で花の蜜をついばんでいるメジロが絵になります。垣根を越えて鼻をくすぐる梅の香は清々しくて脳にも良い刺激が伝わって来るような気がします。冬の寒さで縮こまっている心身を色と香りで解きほぐしてくれる春の訪れは静から動に大きくかわる瞬間。俳句の世界では「探梅」と言って、梅を探しに野山に分け入り詩を詠む習わしがありますが、春のすがたを五感をとおして言葉に置き換える日本の文化も素晴らしく思います。

季節はさらに桃から桜へと移ろい、山肌に霞がかったようなオーラが吹き出すと芽吹きの季節になります。桃や桜が咲く少し前に、遠目から見た樹がふわっと桃色に覆われるように、新緑の前は山肌の色合いが刻々と変化してわくわくさせてくれます。いよいよ新緑の季節になると山桜の薄桃色が点々と彩って言葉に表せないほど美しい。浅黄色、浅葱色、萌黄色、鶯色と芽吹きの色合いだけでもこれではおさまらない。和色辞典を眺めても、芽吹きから深緑に至るまでの色のバリエーションは豊富です。日本の国土の多くは山があり、木々の保水力によって滔々とした水脈が保たれている国の形を現しているようです。

世界の中でも貴重な飲める山の水。そこから育つ生物や人々はどこかやさしくて素直。外来種の虫や草木ようにアクのつよさを感じさせない風土は、この国に置かれた宝物のような気がします。「神の国」と呼ばれてきた美しい波動を絶やさないようにしていかなければならないと心の底から思うわたしがいます。

梅の香に澄みしわが身を取り戻し

木立みず

 

お粗末さまでした!(笑)