凍解けの蓼科山

 

日本列島を挟む二つの低気圧が足早に通過。双子池テント泊の予定が変更になり、山域を変えて日帰りで蓼科山を歩いてきました。

 

◉サルオガセ

ホワイトアウトのスキー場をぬけて、ゴンドラ終着駅に着くと雲の上。新雪が積もっていなかったので、前日は霙だったのでしょうか。春の雪は柔らかく所々膝上まで踏み抜く箇所もありました。間もなく出逢ったサルオガセの掛かる木々が美しい。

七合目登山口にたどり着くと、初めて知ることになった蓼科神社の鳥居があり、その鳥居をくぐるように山道が敷かれていました。御祭神を知らす立て札は見あたらず、拝礼して少しずつ高度を上げて緩やかな谷筋を登りました。

時折振り返ると木立の隙間からアルプスの山並みが遠くに見えて美しい。やがて蓼科山荘に着くと、小屋は雪でおおわれ僅かな屋根がのぞいていました。平坦な樹林の奥には綿帽子のような蓼科山の上部が見えて、強い日差しに雪面が光っています。

◉蓼科山荘の屋根

◉蓼科山

冬道ルートは急な雪の斜面を直登するようですが、先行パーティーに譲られた先はトレースが無く斜度も増して振り返ると少しクラッとする高度感。岩の露出もあり、雪の状態も解らないので下りを想定して12本爪アイゼンに取り替えて来たのは正解でした。

山頂はとても広く雪冠の北アルプスを初め、360度見渡す山々は今まで見たこともないほど鮮明に映りました。蓼科神社奥の院は中央に鎮座されて、陽を背に向けているためか黒っぽく見えます。祠は東端の高度標識(2530m)から遠く離れていて、記念撮影で無惨に踏まれることもなく安堵しました。そして、聖別塩を持ってこれて良かった。岩の隙間を踏み抜かないようストックを挿しながら、慎重に移動してお参りを済ませた後、歓喜する山々の景色を眺めて下山を開始しました。

 

◉奥の院

降りはいきなり高度感あふれる斜度。小舟のように浮かぶ雲を遥か下に眺めながら、そして雪崩を少し気にしながらリズミカルに降りてきました。

◉降り斜面からの雲

七合目までは一気に降りたのですが、そこから先は陽射しで緩んだ雪を腿まで踏み抜く頻度が増して、正直ココが一番の正念場。ゴンドラの駅が見えても中々着かず遠かった。

すでに樹のまわりには雪解けの溝が開き始めています。この先雪解けはさらに進み、根に蓄えきれなかった水が麓の川へと流れて行くのでしょう。足元にある雪が平野を抜けて海に辿り着くのはいつの頃かと思うと、日常の時間の流れと異なる時を感じる不思議な感覚。ふと、人のからだの中を流れる水のイメージが重なりました。今年も田畑が豊かな水でつつが無く潤いますように。

 

蓼科神社

祭神: 高皇産霊神・倉稲魂神・木花佐久夜毘売

 

みた やすよ