東京のセミナーの翌日。
ホテルの一室でうーんと悩んでいた。
チェックアウトの準備のため、キャリーケースの中の荷物を整理していたのだが、最近着始めたばかりの新しい服が曲者だった。妙に立体的な縫製のせいで、なかなかキレイにたためなかったのだ。
「こうかな?」「それともこう?」「あれー?」と試行錯誤していると、向こうから、Sと呼んでいる存在が声をかけてきた。
「俺に任せてみろ」
「んー?」
「立体的な縫製だったら、立体的に畳めばいいってことだろ」
「ほうほう」
感覚系の一部を解放し、腕のコントロールをSに渡すと、服を畳む動作のイメージが伝わってきた。よく分からないながら、その通りに腕を動かす。
すると、マチのある紙袋を畳むときのように、脇の縫い目を中心に割り入れるようにして、脇下の布が折り込まれ、前と後ろの身頃がうまい具合に合わさった。
ベッドの上に置いてみると、服は縦に長いきれいな長方形になっている。
「あ、これで縦に三つ折りしたら畳めるね! なるほど!」
(。´・ω・)ん?
………これって、現代人類の常識からしたらかなり突拍子もないことをしているってことなんだろうか?
NTTが6Gの研究でやっているような、機械や電気信号の助けもなく、こともなげにテレパシー能力で別存在と感覚共有をしていることになるのかなぁ…。