2021.06.12. AM10:40
いつの間にか、暗黒のドーナツ体が真っ白に発光し始めていることに気が付いた。もう少しだろうか?
なおもしばらく皇居に沿って走り続け、やっと皇居を一周するころ、急に全身がざわっと総毛だった。
ドーナツ体は光を放ち、びしびしに内部からヒビが入って、空中分解を始めている。
「今だ、剣を掲げよ! 貫け!」
フツヌシさまの声が頭に響く。
「げっ、この距離から!? あれめっちゃ空中なのに…ええい、投げますよぉー…」
意識体をルーフの上に立たせ、今日一番の、巨大な光の剣を虚空から呼び出してスタンバイする。
めいっぱいに腕を引き絞って、
「…っふ!」
アンダースローで槍投げのように押し出した。
▲ドーナツ型の黒体。剣を投げる頃にはもうかなりヒビが入って、白く発光していた。
ぱりんっと剣がドーナツ体に突き刺さる。綺麗なシアンの透き通った光がひびの間から漏れ出した。
ドーナツ体のひび割れた殻が無数の白い光の欠片になって、それぞれの破片はくるくる回りながら、ゆっくりじわじわと離散しだした。
それはまるで、ドーナツ型の風船が、内側からどんどん膨張するエネルギーに押し出されて、破裂していくような光景だった。
しばらくのタイムラグの後――決壊。
ぶわっ!と爽やかなエネルギーの衝撃波が皇居周辺のビルの間を吹き抜けていった。堰き止められていたダムが決壊したかのような、涼やかな奔流。
頭にかかっていた負荷も一気に軽くなる。
「終わりましたァー!」
「うん、今私も頭からスッとエネルギーが抜けたの分かったよ!」
達成感と解放からの歓喜の叫びと共に、お姉さんというお仕事の証人もゲット。
お役目、完了!
「よし、カフェでも行って休憩しますかー!!」
「やったー!」
四ツ谷じゃ四ツ谷じゃ、と、意気揚々と車線変更をしたところで。
「あ、また道間違えた」
「神保町行き!?」
なんか、まだ余波のように影響が残ってる感じが…。
頭も少しだけ重い感覚が残っているし、今日は残り一日はオフにしよう…とそっと思った。