さて、会社のフィールドに対してダークデバイスを起動すると、また重たいエネルギーがデバイスから噴出した。
火山が噴火した時の噴き上がる煙を思い出してみてほしい。あんな感じで暗黒のエネルギーがどろりと粘度を持って、デバイスの先端の銅板からどくどく吹き出してくる。
それをぼーっと眺めていると、不意にエネルギーの煙の端がぼこりと形を持ってこちらを「視た」。
目玉だ。
「……?」
なんだろう、と思っていたら、目玉は引っ込んでいった。
次の瞬間、一気に変化は起きた。
突然、暗黒の中に無数の何かを検知したことを感覚が知らせてきた。
かと思えば、無数の魔がぐっと凝って、一つの魔物の姿をとった。
(ていうか、こいつら合体するのか…粘菌かな…?)
縦に開いた巨大な一つ目を額にもつ、体長1メートルほどの四足歩行の真っ黒な獣が、私に向かって牙を剥く。中型犬くらいの大きさがある。
「・・・・・おおー」
これはなかなかレアな見た目の異形。(感心してる場合か)
3階の事務所に戻ろうとする私にまとわりつくように、床の上をうろうろ動き回っている。
しかし若干じゃれつかれているみたいで、愛嬌もあるような気もしないでもない……
「ガルっ!」がぶぅっ!「あ」
…噛まれたー。かわいくないー。
「噛まれたー、じゃない」
意識界の後ろから声がした。ひょいっと男の人の手が右後ろから伸びて、その手にあった剣が魔物の体を切り裂き、「ギャンッ!」と悲鳴が上がった。
魔物は床にべちゃっと落ちて、ぐったりと平たく伸びている。
声の主の男性は通称S。本人の語るところに曰く、私がたましいだった時から傍についていて、一応、どこかの神(らしい)。もとは海外の神なのか、背が高くてやたら美丈夫な黒髪碧眼の男である。
私の意識体の右手には穴が空いて、血の代わりにエネルギーがだくだく漏れていた。
「油断してさっさと処理をしないからこうなる」
呆れ混じりの声だった。まったくもって仰る通り。私は真顔で光の剣を取り出した。
やりおったなこの悪魔犬(?)。
なお飛びかかろうとする犬を縦半分に切り裂いて、某鬼退治漫画さながらに首を切り飛ばす…が、ええい、まだ動くのな、おまえたちって!
「光あれ」
イコンの印をイメージしながら、ぶすっと目玉目掛けて突き刺して、魔物にトドメを刺した。
何に入り込まれているか分かったものではないから、あとで浄化と上昇、必須だな。
「あー。意識体の手に穴が空いちゃったー。たぶんすぐに塞がるからいいかな…」
「のんきにも程があるだろ…少しは慌てろ…」
いや、意識体がエネルギー的に負傷したけど、今回はそんなに体に痛みはないからさ…。(痛いときもあるのよ、もちろん)
でも少しは動じた方がいいのかしらん。
人がたくさん溜め込んだエネルギーの方が、えげつないのが多くて、あちこち体が痛くなることもある。
人間由来のエネルギーの方が、やっぱりはるかに強力で邪悪かもしれない。
やけに弱かったのは、ダークデバイスから出てきてかなり弱ってたのかなー。
あと、やっぱり怖いものを見過ぎて感覚麻痺してるのかなー、と思う今日この頃。
みんなは悪魔を怖がるんだよね。
痛いし重いし怖いし襲ってくるし。
でもどこにでも潜んでいるから、発見したら即処理が基本なのだ。
皆さん、悪魔はのほほんと観察してないで迅速に戦った方がいいかもです(観察日記の意義が揺らぎません???)