<第三章>その六

第三章 人間は審判の容器ということ

その六)宇宙の人間原理

この宇宙を説明するために、物理学の世界では、人間原理という言葉が使われることがあります。人間の存在に適合する宇宙の仕組みを、人間的にというか、人間の科学で考えると、そうした原理に行き着くということです。それは、素粒子の世界で有名な光のスリット実験で示されたように、観察者としての人間の存在があると、光は粒子の顔を見せ、人間の存在を感じないと、光は波として振舞うのは、何故かと考えた、ひとつの到達点なのかも知れません。つまり、人間の知識というものは、人間の存在を、前提にした物質というものが見せる姿しか、知ることができないのです。では、光という粒子でもあり波でもあるものが、観察者としての人間存在を、どのように感知しているかというと、まだ、人間は知る段階に到っていませんが、そこには、何らかの情報の受け渡しがあるはずだということになります。また、この情報伝達は、光の速度より早いことは数々の事例で明らかなことから、光の速度より早いものは存在しないという、物理学の知識もそこには適用されない領域ということになります。これを説明するためには、何かを認識する意識という人間がつくり出すエネルギーに、この宇宙の素粒子の秘密を解き明かす情報が含まれていると考えるしかなくなるのです。すると、この宇宙の人間原理というのは、案外、宇宙の本質に近づくアプローチかも知れないということになります。

(つづく…)

二千二十三年 一月二十日 積哲夫 記