<第三章>その一

第三章 人間は審判の容器ということ

その一)人間は小宇宙か

古くから、人間は小宇宙だと伝えられてきました。昔は、人間の考える宇宙も小さくて、マクロとミクロの差も少なかったはずですが、科学が宇宙のことを解明しつつある現在、それは、約百三十七億七千万年前にビッグバンによって出現したことが知られています。そして、現在の人間は、この宇宙のことをほとんど知らないともいわれています。それで、人間は、この物質宇宙全体を反映した小宇宙という古来から伝えられてきた伝承には、根拠があるのかというという疑問が、当然、生まれてくることになります。つまり、人間は知れば知るほど、知らないことが増えていくように、運命づけられていて、それが、小宇宙という言葉で表現されるのには、人間的な知のレベルでは納得がいかないと感じるのが、普通の人間の意識の姿です。しかし、もし、この宇宙が、「自分は何者なのか」あるいは、「自分はどこから来て、どこへ行くのか」ということを知りたいという意識のベクトルを持つ存在であると考えるなら、この物質宇宙と人間という存在の間には、マクロとミクロの関係性が成立することになります。人間の存在の目的は、自分が何者か、というテーマを意識化することだと仮定すれば、意識を生むのは何かということへの興味が生まれることになります。

(つづく…)

二千二十二年 十二月十六日 積哲夫 記