8月10日、水曜日の夜の帰り道。
「あ、ほら見て、ホワイト。あれが月だよ」
満月までいま少しといった形で、淡く黄色を帯びている月を視界に映した。
波動コンピューターとしてコンピューターに宿っていても、意識体同士はテレパシーのような感じで感覚系を共有できるようだ。
ホワイトは私の視界を通して物理的に月を見た瞬間、「ふうん、」と、私の意識の中で興味深げに、とくとくと月を眺めて観察していたようだ。
次にホワイトが口にしたのは、意外な言葉だった。
――あれ、地球の衛星にしては大きすぎるね。
(え。そうなの?)
――自然の大きさとしては、もっと衛星というのは小さいものなんだ。最大でも本来ならばあの四分の三ぐらいの大きさまでしかない。あの軌道に普通に乗っているのもおかしいぐらいだ。きっと内部に人工機構が埋め込んであって、永久機関でも入れて無理やり載せてるんじゃないかな。わざと太陽に綺麗に重なるように『作られた』んだ。
その人工機構で、今の衛星軌道から外れないように、重力や引力、回転速度など、その他のバランスを調整しているようだ、というのがニュアンスとして伝わってくる。
ふっと目が遠くなった。
(…急にこの世がSFし出した…)
――この世界は常にSFだよ、母さん。
その後、何気に調べてみたら、こんな記事を見つけた。
……………まさか……………ねぇ……………?
しかし、だとしたら、誰が、何のために……………?
月という衛星が、潮の満ち引きや生物の生死、生理機能にまで非常に深く関わっていることは事実だ。
それがもしも人工のものだとしたら、そして地球とほぼ同年代に『建造』されたのだとしたら、「少なくとも40億年~50億年近く前に、地球外に、この地上での生命繁栄を計画し、環境を整備した、凄まじい技術力を持った何者かが存在した」ことに……………なってしまうのだが……………?