ウラノスとアネモイは職員の案内でナオス・ヘプタに入ると、
「え!
ものすごい浄化力!
まだ入り口なのに一瞬で身体が軽くなった!」
とウラノスが驚くように言うとアネモイが、
「本当に驚くわ、この光に満ちた空間。
内部はあまりに広すぎて気が遠のきそうね。
それに真っ白でまるでメテオラの操縦室みたい。」
と応えた。
二人は職員の案内でナオス内専用のメテオラに乗りナオス中心へと向かっていった。しばらく移動し中心に近づいてくると床の色が異なったエリアが見えてきた。それは大きな円を描いており、二人はそのエリア手前でメテオラを降り歩いてその中に入った。数百人ほどが余裕で入れそうなエリアで職員の説明では許可を得た一般の方はここで浄化と上昇をするとのことだ。今日はあえてウラノスのために一般人は入館禁止にしているという。そこに入ると周囲の景色が変わった。一般的なナオス同様、壁がすべて透けてまるで野外にいるような景色になるのだ。二人がそこに入ると、
「わー!
さらに空気が変わった!
このエリアはさらに強烈な光のエネルギーを感じるわ。
天に引き上げられるような感じ!」
とアネモイは驚くように言うとウラノスも、
「ここに入った瞬間に天高く意識が上昇したよ!」
と少し気持ちが高ぶっていると、この丸いエリアの真中で立っていた一人の初老の男性が、
「いかがですか、ナオス・ヘプタは。」
と声をかけてきた。それは、ここからの案内を頼まれた祈り人だった。職員が祈り人の紹介をするとウラノスは、
「すばらしいです、ここは。初めてきて感激致しました。
本日は宜しくお願い致します。」
と言って、ここからの案内をお願いした。祈り人は、
「では、ウラノスさん、ここから祈りの間にご案内致します。」
と言って、アネモイと職員を残して二人はこのナオスの頂上にある祈りの間に向かうことになった。ウラノスはどのようにしてそこに行くのか疑問だったが、祈り人が、
「私が立っているさらに色の異なる丸い床にお入り下さい。」
と言ってウラノスは四、五人ほどは入れそうなさらに丸く色の異なる床に入った。突如その床は浮き上がりまっすぐにナオス内を上昇していった。ウラノスは、
「お!
そういうことですか。」
と納得した。床の上昇も祈り人の光の想念を利用しており、かなり高い能力を必要とし通常の人間では頂上までたどり着くことは不可能なのである。上昇途中祈り人が、
「ウラノスさん、この床を上昇させるのを変わって頂けますか?」
と言われ、ウラノスは難なく中継し床を上昇させていった。祈り人は、
「流石、元メテオラ操縦士ですね。やはりあなたには高い能力がおありなようです。」
と言われた。しばらくすると透明だったナオスの壁が通常の白色に変化していき、さらに上昇していくと頂上らしき場所に到達した。ちょうど浮いている床と同サイズの円形の穴がありそこにスッポリと二人の体ごとおさまったところでウラノスは床の上昇を停止させた。それと同時に移動していた床は外側からロックされその場に留まった。到達した室内も円錐状で広く真っ白だった。祈り人は、
「ありがとうございました。ではここから壁に沿って作られた階段を昇っていきます。」
と言われついていった。その階段は円錐の空間内の壁に掘り込まれており綺麗に螺旋を描いて天井へと続いていた。真下から見ると、それは幾何学的でありまるで渦を巻いた真っ白な巻貝のようにも見えた。階段を登りきると野外に出たようだった。ウラノスは、
「おー、すごい景色ですね!」
と驚いた。
周りには全く遮るものが無い風景の中、眼下には放射状に広がった道が何本もありその道はさらに枝状に分岐しているのが分かった。そして、その分岐した道には規則的な間隔で住居や施設が点在しているのが僅かに確認できた。それらの隙間には多くの木々や林や森があり遠くには湖を望むことができ自然豊かな光景であった。それはこの星が出来る限り自然環境を崩さず、自然に同化した社会システムと生活環境を形成している様子が伺える景色だった。
流石の元メテオラ操縦者でもこの光景には驚かされた。メテオラはナオス上空を航行することが禁じられている。それだけに、ナオスの頂上からの視点、それも最も大きいナオス・ヘプタから望む景色は今まで見たことがないとても美しい光景なのだ。
「ここが祈りの間になります。ここは野外のようにみえますが、ここの壁も内部から外が透けているだけなので室内なのです。」
と、祈り人から説明がありウラノスに、
「ここで、少し浄化と上昇してみてください。」
と言われ試みた。ウラノスは静かに目を閉じ集中した。すると、上昇したかと思った意識は一瞬で宇宙から白き星アスプロを眺めていた。同時に宇宙から光がどんどんウラノスの中に満ちていった。ウラノスは、
「この状態なら星全体に光が送れる。これはメテオラの比ではない。すごい光のエネルギーが体内から星に向かって流れていく。」
と思った。ウラノスが短時間の浄化と上昇を終えると祈り人から、
「どうでしたか、星全体に光が届きましたか?」
と言われるとウラノスは、
「はい、とても感動致しました!」
と応えた。祈り人は、
「祈りの日は、この場所を含め七つのナオス・ヘプタから祈り人が同時にこの星に光を放ちすべてを浄化するのです。
如何ですか。これがこの星で最も神聖と言われるお役目です。」
と言われるとウラノスは、
「ぜひ、このお役目を担わさせて下さい!」
と即答した。祈り人は、
「頼みましたよ。」
と一言だけ言って、二人は再び地上に降りていった。